「・・・っ、よし」ゆっくりと扉の取っ手から手を離せば、ポタポタと頬を汗が伝う。 あの日、天にぃが倒れたと聞いたあの日、居ても立っても居られなくて無意識に自ら扉を開けた。 だからきっと大丈夫。そう信じていたけれど実際目の前にすればドクドクと動悸が激しくなりカタカタと手が震えてしまう。 怖い――。 扉の向こうはあのスタジオではない。ただの病院の廊下だ。頭ではそう分かっているのに怖い――。 もしかしたら実はここは病院のセットであの扉を開ければあのスタジオなのではないか・・・恐怖心が勝りそんな妄想までしてしまう。 だけど、自分はここから出なくてはならない。だって、あの日、夢の中で天にぃに自分は言ったのだ。歌声を今・・・貴方の元へ返すと。そして、オレを信じ待っていてくれると。だから、オレはその声に答えたい。ゆっくりと息を吸って気持ちを落ち着かせ、もう一度取っ手に手を伸ばす。 大丈夫怖くない。怖くない。あの言葉を、天にぃの言葉を信じて・・・大丈夫。 ほら、このまま・・・――ガラ「・・・開けられた」取っ手を持っていた手を横にずらせば簡単に開いた扉。そして、色々な人々が行き交う廊下。 病室の扉を開けた瞬間、目の前を通り過ぎようとした看護師がビックリした様な表情でオレを見た。 そして、手に持っていたファイルを床に落とし、目を潤ませてオレの手を掴み、良かった良かったと泣いてくれた。 あぁ・・・ここにもオレを待っていてくれる人がいた。 オレを抱き締めて泣いてくれる看護師さんの暖かい温もりを感じながらボロボロと涙が溢れ、恥ずかしいけど二人して大泣きしてしまった。 その後、先生が来てくれてゆっくりとリハビリとカウンセリングをしていこうと・・・だけど、オレにはもう時間がなかった。 TRIGGERとアイドリッシュセブンの皆と一緒なステージに立ちたい。立って一緒に歌いたい踊りたい。だから――