そして。彼女を見て、ハッと息を呑んだ。 なんだか、不可解な間を感じた。 (何?この空気感......。加藤マネ、もしかして、彼女のこと知ってンの?) すると。再びコツコツと靴音が響いた。 「沙也加さん。お待たせして申し訳ありません」思わず、貴明が振り返る。そこには、スカウト部主任の陣内がいた。 「あ......どうも、陣内さん。ご無沙汰しております」貴明は神妙に頭を下げる。友人と繁華街をぶらついていた貴明をスカウトしたのが陣内であった。陣内のおかげで、 今の貴明があると言っても過言ではない。 「やあ、『タカアキ』君。頑張っているようだね」柔らかな口調で陣内が目を細める。 「いえ、まだまだです」 そして。『沙也加』と呼ばれた彼女を振り返って。 「こっちの彼女は俺の名前も知らないようなので。はい、もっと頑張ります」 茶目っ気たっぷりに貴明はウィンクをした。 彼女は呆気に取られる代わりに、小さくプッと噴いた。 「ちょっとぉ。それって、失礼すぎだろ」 思わず本音が駄々漏れた。