むろん、だからといってソラに格別な感情を抱いたわけではない。求められれば夜伽もしたが、それはあくまで奴隷としての奉仕であって、どれだけ肌を重ねても恋情が芽生えることはない、と疑いなく信じていた。 それが希望的観測だったと悟るまで、あまり時間はかからなかった。 はじめは自分ひとりだった夜の行為にシールが加わるようになり、すこし時間を置いてミロスラフも呼ばれるようになった。自然、ルナマリアが肌を重ねる機会は減っていく。ルナマリアにしてみれば望まぬ環境から遠ざかれるのだ、胸をなでおろしてしかるべきだったろう。 だが、実際に胸をよぎったのは安堵以外の感情だった。 このとき、ルナマリアは自分の中にソラへの『情』が芽生えていることに気がついた。相手の荒々しさに引きずられるように、身体も、心もソラの側へ傾いてしまっていることを自覚した。 それが恋情なのか、愛情なのか、同情なのか、はたまたそれ以外の感情なのか。それを確かめあぐねているうちに鬼ヶ島の三人組が来襲し、スタンピードが発生し、ヒュドラが出現し――気がつけば、ソラを失うことを本気で恐れている自分がいる。 ルナマリアは小さく息を吐き出した。この先どうなるのか、自分はどうしたいのか。明敏な賢者の頭脳をもってしても、それらの答えは容易に見つかりそうになかった。