「では、そのために、個人で練習を?」「ええ…今の私じゃ、納得のいく演奏ができないもの」カフェの席で、私は白鷺さんにいろいろと話を聞いていた。最近はいつも以上に忙しそうにしていたのと、ベースがあんな状態になるまで練習を重ねていたので、少し心配になったのだ。「でも、どうして…?確かに最近は少し学校へ行けない日もあったけれど…」「もちろんそれもありますが…かなりベースの弦が緩んでいましたし、1弦に至ってはナットに当たっている部分が切れそうでしたから」「紗夜ちゃん…一目見ただけでそこまで…同じ弦楽器を演奏する人ならでは、かしら」「そうですね…それに、私も昔はそんな時期がありましたから」「あら、そうなの?」「ええ…そういえば、白鷺さんに話したことはありませんでしたね。私がギターを始めた、最初のきっかけを…」「そうね…確かに、ギターを始めたきっかけは聞いたことがないわね。今はRoseliaのギタリストとしてギターを弾いているのでしょうけど」「今はそうだけど…昔は全然違ったのよ」そうして私は一瞬だけ目線を逸らし、昔話を始めた。―日菜に負けたくない、その一心で日菜がやっていないギターを始めたこと。―1年前、組んでいたバンドと別れ…湊さん達と出会って、Roseliaを結成したこと。―日菜と比べる私ではなく、私自身が日菜と並べるようにと、約束したこと。―そして今は、Roseliaのギタリストとしての誇りを持って、ギターを弾き続けていること―