それから1週間ほど経っただろうか。丸山さんのバンドのライブの話が耳に入った。初ライブは失敗してしまったらしい。それなのに彼女は落ち込む様子もなく周囲に明るく振舞っていた。私には理解できなかった。失敗した。それなのに彼女は諦めることもせず前を向いて再び努力をする。何故そんなことが出来るのだろう。失敗というのは今までの努力を全て無駄にしてしまいかねないのだ。それなのに、何故。 その日から少しずつ丸山さんに対して目を向けることが増えていった。 最初は単純な興味でしか無かった。彼女は何の為に努力をするのか。そして彼女を突き動かすものは何なのか。それが知りたかった。 彼女について知りたい。だから私は決意した。もう少し接してみようかと。「あの……紗夜ちゃん。ちょっといいかな……?」 決意をした翌日の昼休み、タイミングの良いことに丸山さんが話しかけてきた。果たして一体何の用なのだろうか。「どうかしましたか?」「あのね……私、紗夜ちゃんと仲良くなりたいなって……だから、一緒にお話したいなぁって思って」 何故私なのか。真っ先にそれが疑問として浮かんだ。それなので尋ねてみた。「何故、私なのですか」「いや、その……紗夜ちゃんの事、前からかっこいいなって思ってて。だから、仲良くしたいなぁって」 彼女の答えにさらに疑問が浮かぶ。「かっこいい……? 私がですか……?」「うん! 普段から風紀委員の仕事とか頑張ってるし、勉強とか運動も出来て、ストイックな感じもするから」 あぁ、この人は何も知らないんだな、と思った。勉強や運動ができる?まさか。ストイック?違う。私の努力はそれとは違う。 少しイラッときそうになったが、抑えて会話を続ける。「そうですか。丸山さんにはそう見えるのね」「……? 紗夜ちゃん、それはどういうこと……?」 やはり彼女には分からないようだ。「いえ。特に何も。ただ、あなたの好意には感謝するわ」「へ……? あ、うん! どういたしまして……?」 私からの突然の感謝に彼女は驚いた様子だった。でも、少し嬉しそうだ。丸山さんの表情はころころ変わる。とてもせわしない人だと思った。でも何故か、不思議と嫌な気分にはならなかった。「ねぇ、紗夜ちゃん。もし良かったらお昼、一緒に食べない?」 意外にも彼女から昼食の提案を受ける。もう少し丸山さんと話がしたいと思ったし、断る理由も無いので一緒に食べることにした。