質問した私の方が馬鹿だった。 陸さんは体調が悪いのを隠したがる。まるで悪い事をした子どもみたいに。 「陸さん」 しっかりと目を見て呼びかける。 「私は陸さんと、陸さんの笑顔が大好きです。沢山笑って過ごしてほしい。だけど、無理して笑ってほしくはないです」 「そんな、無理なんて…」 「ずっと怖かったんでしょう?眠れていますか?」 問い詰めると、観念したように重い口を開く。 「本当は…凄く怖い。部屋にいても、すぐそこにあの人達が来てるのかなって不安になって…あんまり眠れてない」 目の下に薄っすらとクマが出来ている。疲れが見えて、辛くなる。 「そういえば、記者の人と会わなかった?大丈夫?」 「はい。あれ?TRIGGERのライブグッズ…」 「えっ?あ…」 ふと視界に入ったラックに、うちわとペンライトが置いてあるのが見えた。 チケットが当たらなくて今回は行けていないのだが、グッズは通販で購入していたので見覚えがあった。 「実は…友達に誘われて、見に行ったんだ…」 「え!?でも…お兄さんが…」 「久しぶりに近くで見た。トロッコに乗って、かなり手前にやって来たんだ。カッコ良かったよ」 正直びっくりしている。TRIGGERを遠ざけていたはずなのに。 「見に行ってみて、考えが変わったんだ。TRIGGERの九条天がどんな凄い人なのか…やっと分かった」 声色からも心の変化が伺えた。 「お兄さんは…子どもの頃は、どんな方だったんですか」 「優しかったよ。両親が共働きで、親みたいに面倒見てくれて…」 笑顔で語り始めたと思ったら、途端に表情が曇る。 「だから…家を出たくなったのかな」 「陸さん?」