ヴァンダルーの決定に、従属種吸血鬼達の三分の一がほっと安堵の溜め息を漏らし、三分の二が「おぉ!」と短く歓声をあげる。……ちなみに、後者が狂信者っぽい者達だ。「全員ヴィダ派への改宗と、暫く監視付の生活をしてもらいますが。監督は……闇夜騎士団に頼みましょうか」『お任せください、ヴァンダルー様。私の部下達ならこいつ等を躾けてくれるでしょう』 闇夜騎士団はアイラが団長を務める、ヴァンパイアゾンビを中心にした騎士団だ。彼女と共にタロスヘイムのルールを守り、人々に愛想よく接しながら町の清掃等のボランティアで地道なイメージアップに取り組んだ者達なので、従属種達の監督を安心して任せられる。「これから回る組織でも何人か……何十人か増えるでしょうからね」「……念のために尋ねたいのだが、吸血鬼は全てああなのだろうか? 今日自分が吸血鬼だと気がついたばかりなので、自覚が無いのだけど、いつか私やセリスも同じになるのか?」「違う……はずだけど、私達が言っても説得力が無いわね」 不安そうなベストラにエレオノーラはそう答えた。しかし、ヴァンダルーから貰った首輪をしている彼女の言葉にはやはり説得力は無かったらしく、ベストラは不安そうなままだった。 ヴァンダルー達がこのビルカインの居城であるこの砦に来た本来の理由は、子供達が大勢捕らえられており、ビルカインが帰って来ない事から彼の敗北を悟り、自棄になった吸血鬼達が子供達を殺すか、逃げ出して子供達だけ取り残される事を危惧したからだ。 それが無いと分かったため、ヴァンダルー達は他のビルカインの拠点や施設に行く前に、この拠点に設置された部屋を使ってジョブチェンジを済ませる事にした。ただ速やかにとはいかなかった。 エレオノーラがジョブチェンジ可能なジョブに姫と付くものしかなく、【変身剣姫】を渋々選び、ベルモンドも同じような理由で【変身クノイチ】を選んだ。「明らかにヴァン様が作ったこの変身装具のせいだけど……便利過ぎて手放せない! ヴァン様は私達をどうしたいの!?」「全くです、旦那様。はっきり言ってください。覚悟しますので」『二人ともまだまだ分かっていないわね。言われずとも察するのが、私達僕の本来あるべき姿というものよ』「俺の主な目的はより優れた装備を使ってもらい、皆に強くなって貰う事なのですが。まあ、多少楽しんでいるところがあるのは否定しませんけど」 二人に詰め寄られ、アイラがトラブルの起きるフラグを立てようとし、ヴァンダルーが本心を繰り返し打ち明けて宥めると言う一幕があった。 尤も、カナコやダルシアによると【魔法少女】等のジョブは能力値の成長率が高い有用なジョブなので、それに近いだろう【変身剣姫】や【変身クノイチ】も同様に有用なジョブとなる筈。エレオノーラとベルモンドはまた一段階強くなる事だろう。