(やっぱり、あゆみさんは凄いなあ…) 深く溜息をつく。いつかわたしも、あゆみさんみたいに輝きたい。眩しいステージで歌って踊って、そして…誰かを勇気づけられるようなアイドルになりたい。心の底がじりじりと焦げ付く気持ちが抑えられなくて、今すぐにでも身体を動かしたくなる。(だけど我慢!怪我を治すのも練習のうち…) 起きているとぐるぐる考え込んでしまいそうだから、早いけど今日はもう寝ることにした。 布団に入って、紗夜ちゃんの言葉を思い出す。『私は、諦めたくありません』 わたしと紗夜ちゃんは何もかもが違う。勉強も運動も紗夜ちゃんの方が出来るし、やっている音楽もアイドルとバンドでまるで接点がない。でも、同じような気持ちでそれぞれの音楽に打ち込んで、同じように諦めたくないと思っている。それがなんだか心強い。(明日も見学に行こう) そう決めて、目を閉じた。 二日休んだ後のレッスンスタジオ。右足の熱と痛みはすっかり引いていた。「丸山さん、足はもう大丈夫なの?」「はい!」(今日は、見学じゃなくていいんだ) 嬉しくてうずうずして、ぐっと両手を握り締める。たった二日だけど、我慢できないほど待ち遠しかった。学校で授業を受けている時から落ち着かなくて、紗夜ちゃんが目を丸くしていたことを思い出す。『丸山さん、何かいいことでもありましたか?』『えへへ、今日からレッスン行ってもいいって言われたんだ』『怪我、治ったんですね。大事に至らなくてよかったです』『うん、しっかり休んで良かった!紗夜ちゃんのお陰だよ。それに、この二日間で…』 この二日間で確かめた。わたしがあゆみさんの言葉と、わたし自身を信じていること。絶対に、諦めたくないこと。(何があっても、絶対にめげない、諦めない!) 蜘蛛の糸が垂れてこないなら、壁をよじ登ってでも明るい場所に行く。今よりもっと輝いて、あゆみさんみたいなアイドルになるために!(どんな時だって、いつも笑顔!) 燃え上がるような気持ちが身体中に満ちる。手足が軽い。身体に灯る熱が、汗になって流れ出す。踊るのが、楽しい!この気持ちを、わたしがあゆみさんから貰ったものを、色んな人に届けたい! 気が付くと、トレーナーさんが目をぱちぱちさせている。「…正直、驚いたわ。かなりよくなってる」「っ……ありがとうございますっ!」 また、目の奥が熱くなる。でもこれはきっと、この前とは違う理由。「今年で卒業なんだから、頑張りましょうね」「うっ…はい」 苦笑いするトレーナーさんの言葉に胸がどきりとした。だけど。(何があっても、絶対にめげない、諦めない) わたしに力をくれる、あゆみさんの言葉。 あゆみさんの言葉を道標にして、わたしは歩み続ける。 努力すればきっと、夢は叶うから。