ふと気づくと、あの人の匂いはなくなっていて、きっと、俺を見失ったんだと思う。後ろから、しのぶさんの匂いもしていたから、きっと、しのぶさんが助けてくれているはず。俺はもう少し、頭を冷やしてから、あの人が寝てから部屋に帰ろう。俺は、その場にしゃがみこんだ。拭っても、拭っても、出てくる涙を拭い続けた。あの人の声が頭の中でぐるぐるする。あの人が、確かに『好いた人』と言った。「うれしかったなぁ…っ」でも、俺は、あの人にふさわしくない…。あんなにも、強い心をもってない。だから、きっと俺は、あの人の隣には立てないんだ…。嘘だ…。本当は、隣に立つ勇気がないんだ。「早く、止めないと…。」俺の涙は一向に止まる気配を見せなかった。