僕自身も陸のために披露する小さなステージを重ねるごとに歌やダンスが大好きになった。九条さんについていって最高のアイドルになっていつか陸に最高のステージを見せてあげたいと。 自分が七瀬を捨てることは決して無駄ではない。意味のあることだと自分に言い聞かせてここまで生きてきた。なのに。。。 「僕は・・・何のために・・・っ・・・なんでこんな・・・・・ぅぁ・・ぁああああ゛ぁああ!!」あんな、心が引き裂かれるような想いをして 大切な人たちを置いてきたというのに。泣く弟に振り返ることもなく両親に多くを語ることもなく去ったことの意味のなさ。もう惨めで仕方がなかった。 胸が痛くて、苦しくて、仕方がなかった。昔は当たり前にそばにあった温もりはなくて 自分で自分の肩を掻き抱くしかない現状が さらに涙を誘う。最初声にならなかった叫びは慟哭となって 僕の喉からそれは音となって漏れ出し 喉がはちきれるんじゃないかってくらい叫んだ。事実を知ったところであの時の僕には何もできなかった みっともないくらいに泣いて叫ぶくらいしかできなかった惨めさは今での痛いくらい覚えている。ひとしきり荒れ狂う激情を泣いて発散させた僕は満身創痍で壁に寄りかかっていた 気づけば外もくらい。一体何時間が経過したのかと思いつつ考えるのが億劫で すぐに意識をそこからそらした。一度失ったものはもう戻らない人生に”もしも”なんてありえない。過去は変えられない。時は止まらない。なら進むしかない。こちらも九条をとことん利用する。そしていつか時が来たら反旗を翻す。あなたの思惑通りには絶対させない。そう決意したあの日。そして今が”その時”なんだ。もう会えないかもしれないと、もうあのころの僕らには戻れないかもしれないと もっと早くに会いに行きたかったのに会いに行けなかった僕の元へ 形はどうであれ陸を運命は連れてきてくれた。また巡り合わせてくれた。 陸も必死にここまで生きてきた。 独りになっても諦めずに。今度は僕の番。 とうに真実に気づいていたけれど 今回はもう一つの疑念をハッキリさせなければいけない。母さんの死、あれは多分・・・・。「お客さん、行き先この辺で会ってますか?カーナビだとこのへんのはずなんだけどねぇ。」思考の海に潜ってた僕をタクシー運転手さんの声が引き戻す。 気づけばもう周りは見慣れた景色だった。ここからなら歩いて帰れる。「ここで大丈夫です。ありがとうございました。」タクシー代を払っておりた僕はひときわ目をひく煌々と明かりが灯る高層マンションへ 僕の”家”へと一歩一歩足を進めていった。