天の入院から三日ほど経ったころに、事務所よりファックスが流された。もちろん、事前に天にもチェックを入れてもらって。天が病に侵されていること、入院を余儀なくされていること、グループとしてTRIGGERの活動を休止すること。主にこの三点をマスコミに向けて報告した。何の病か、は天の意向により伏せられた。がんだと言ってしまえば、きっとまた陸と結びつけて騒ぎ立てるのが目に見えていたから。入院して十日ほど過ぎたころ、IDOLiSH7のメンバーたちがちらほら見舞いに訪れるようになった。今日は、三月と楽という妙な組み合わせで天のもとを訪れていた。見舞いの品、という三月の手作りプリンを片手に。「……わざわざ、作ってくれたの?」 「まあな。陸みたいに急激に食が細くなってるわけじゃないって聞いたから」 「……ありがとう」いただきます、と手を合わせてひとくち頬張る。甘さが控えめで、喉越しも良くて。これならひとつ、余裕で食べられるなと思った。 もぐもぐと無言で頬張る天を見て、楽はふっと笑った。じろりと睨む。「なに」 「いや、なんでもない。……ところで、天」 「……なに」すっと笑顔を引っ込めて、楽は天に問うた。「お前、なにか隠してないか?」 「……世間には、隠しごとしてるけど」 「ちげーよ。俺たちに、だ」 「……ないよ」食べかけていたプリンに目を戻して、また食べ始める。……このひと、本当に妙なところで冴えてるんだから。「……ま、いいけど」一気に重くなった空気に耐えきれなくなったのか、三月が頭を掻いた。「ここにきて仲違いすんなよ、お前ら」 「これがボクと楽の日常だよ」 「……はあ。ま、いいけどよ」コンコン。扉がノックされ、失礼するよと凛とした声が響いた。「おや、お客さんがいたんだね。出直そうかな」 「あ、平気ですよ。俺たち、外出ますんで」 「申し訳ない。それでは、お願い出来るかな」 「はーい」ガタガタと椅子から立ち上がると、三月と楽は病室から出て行った。すこし間を空けて、医師はこちらへ向き直った。「天くん、……ひとつ、提案がある」 「……なんですか」 「身体から綺麗に腫瘍を取り除くことは出来ない。……けれど、限りなく取り除くことは出来る」 「……つまり?」 「肝臓の半分と、片肺の半分を取り除けば、退院して暮らすことは出来る」