あの日、僕が九条になった日から大人が苦手になった。僕の周りには色々な大人がいた。表面では耳当たりの良いことを優しい口調で言う大人。そんな人に限って内心は僕に取り入って、 九条さんのツテを頼ろうとか ドロドロとした魂胆が丸見えだったり。僕のことをただの商品としか見ない大人。期待値以上のものを見せなければすぐに 興味をなくされて失敗は許されなかった。そんな大人たちに囲まれて僕は自分を守れるのは自分だけ。 そう言い聞かせて生きてきた。誰かに頼るなんてもってのほかだ。隙を見せることになって付け込まれる。 だから幼いながらに常に気を張って生きてきた。でも正直つらかった。クリスマスの時期に街中を歩けば 仲良く親子が手を繋い歩いている姿が嫌でも目に入った。 見返りを求められない絶対的な関係がそこにはあって。温かな会話、心のそこから愛しさを含めた声。自然な笑顔。優しい眼差し。かつで僕にも向けられていたそれ。本当の愛情なんて知らなければ 嘘つきな大人たちの間にいても 何も感じなかったのかもしれない。でも知ってるが故に求めてしまう。 愛されていたが故の葛藤だった。誰かに頼りたい、助けて欲しいと思う心は どんなに抑えてもこぼれ出てしまう。それでも何とか必死に抑え込んで生きてきた。 そうしないと生き残れなかった。でも今、そんな僕の生き方に転機が訪れようとしているのかもしれない。今一度、信じてみたいって思える人達に出会えた。僕のことを自分のことのように気にかけてくれて 一緒に笑って、一緒に怒ってくれる人達に。手を差し伸べてくれた人達に僕は今一度手を伸ばす。 信じてみたい。仲間を。