「こんにちは、彩さん」 柔らかな笑みを浮かべた紗夜ちゃんを見て、なんだか安心した。「いらっしゃい、紗夜ちゃん! ほら上がって!」「お邪魔します」 きちんと靴をそろえて上がる紗夜ちゃん。 なんだか、なんでもないことなのに見ていて嬉しくなってしまう。「彩と仲良くしてくれてありがとうね! 今日はゆっくりしていって! 晩ご飯の時になったら呼ぶから!」「お気遣いありがとうございます」 お母さんまで出てこなくていいのに。 とりあえず紗夜ちゃんを部屋まで案内する。「散らかっててごめんね……」「いえ、そんなことないですよ。それにしても、彩さんの部屋にお邪魔するのは久しぶりですね」「そ、そうだね」 こうして部屋で二人きりで過ごすのが久々でなんだか緊張してしまう。「今日のお仕事はどうでしたか?」 妙に黙る私を見て、紗夜ちゃんが話題を振ってくれた。「あっ、今日はね、パスパレのみんなと写真集の撮影だったんだ!」「写真集ですか。どんな写真を?」「うーんと……今日は衣装の写真とか撮ったよ! あと、写真集には前に撮った水着の写真とかも載るんだ!」 水着、というワードに紗夜ちゃんが少し反応したような気がしたけど。「本ができたら、一番に紗夜ちゃんにあげるね!」「えっ、えぇ……ありがとう……」 紗夜ちゃん、顔を赤くして目を逸らしちゃった。なんか変なこと言っちゃったかな……? ちょっと変な空気を遮るように、部屋のドアのノックとともにお母さんの声がした。「今大丈夫かしら? お茶持って来たわよ」「う、うん。大丈夫だよ。ありがとう」「あら、もしかしてお邪魔しちゃったかしら?」 ふふ、なんて笑って、お茶を置いたらすぐに部屋から出ていった。 お母さん、タイミング悪いなぁ。「ご飯まで時間あるし、なにしよっか」 私がそう言うと、紗夜ちゃんは荷物の中から教科書とノートを引っ張り出してきた。「……紗夜ちゃん、それは……?」 私が首をかしげていると、「以前、古典が苦手だと言っていたのでもしよければ一緒に勉強を、と思いまして……」