「彼に私との事を知られたくなかったら、大人しく従いなさい」
「!! そ、それは…ッ」
「……大切なバディを、失いたくはないだろう?」
脅し、のつもりだろうか。だが、ディオの抵抗を奪うには充分だった。
「元々、素性の知れなかった相手だ。訓練もまともに受けず戦場に立つような男、いつ仲間の〝流れ弾″に当たるかも分からないだろう。家族もいないのなら、MIAになったところで悲しむ者もいない。名誉ある戦死として処理される」
「貴、様…!!」
「また私のお人形さんになるのなら、存分に可愛がってあげるよ」
そう言うや否や、中佐の唇がディオのそれに重なった。
舌先を巧みに動かして、熱い口内を軽く愛撫してくる。
青葉とは違う、自分勝手で、利己的なキスだった。
口付けを解かれると、今度は首筋、鎖骨、胸元を唇が辿る。
男が触れた箇所は真っ赤な欝血痕を残し、鮮やかに花が咲いていた。
ディオは抵抗出来ない自分を不甲斐なく思いながら、縋るように天井を見上げた。
あお、ば……。
昔の傷が消えたら、全てを許すつもりだった。
それなのに。