小さい頃から将来この子は絶対美少女になると言われていたけれど、想像の中の彼女より、本物はずっと可愛かった。 二度と会えなくなってもいいと覚悟を決めていたはずなのに、やっぱり求めていたんじゃないか。 自分の甘さに笑えてくる。 また会う日はやって来るだろうか。またあの子は会いに来てくれるだろうか。 ……いけない。こんな感情は、持っちゃいけない。 ボクの恋人はファンだ。ボクは、ボク達の歌声を求める人達に会いに行く。愛情も、時間も、全て捧げる。 見つめるべきは誰かじゃない。私利私欲は捨てる。これは七瀬天としての私情だ。 アイドルの…TRIGGERのセンター九条天として、ボクは今生きているんだ。 子が親を選べないように、兄妹だって選べない。 だけどファンの子は、応援する対象を選べる。 沢山のグループがある中で、ボク達を選んでくれてありがとう。ボク達のために、忙しい中、大変な中、時間を作って、ボク達に愛を注いでくれてありがとう。 その感謝を忘れてはいけない。今日見れた景色は、未来永劫続くと約束されたものじゃない。 永遠になるのは難しい。未来に名を残すには、伝説が必要だ。 その伝説を目指していく中に、妹に会えるかなんて淡い期待を持ち込んではいけない。