それには地下室に作るダンジョンで対応しましょう」「なるほど。地下室にダンジョンを創り、緊急時の避難所及び戦力の供給源にすると」「……いえ、出来るだけ等級は低く作るので、戦力にはならないかと」「場合によってはこの町から回収する余裕が無いかもしれないものね」 下手に等級の高いダンジョンを創ったら、それでこのモークシーの町が大変な事になりかねない。上手くダンジョンを取り込んで迷宮都市としてやって行けるようになるなら良いが……その過程でこの家から近いスラム街の住人は住むところを失いかねないので、それは気の毒だ。 それにダンジョンの魔物を戦力として使わなくてはならない局面になった時点で、町は壊滅状態か、それが避けられない状態に陥っているはずだ。 そうならないためのダンジョンを創るのだから、それでは意味が無い。「まあ、階層を広く作らないといけないのでE級に抑えられるかどうかですね。じゃあ母さん、俺は地下室でダンジョンを創る……前に、ちょっと家の裏手まで行ってきます」「家の裏手に? じゃあ、グファドガーンさんが持ってきてくれた晩御飯が冷めない内に帰ってくるのよ」「はい」 久しぶりに人の気配が内部に在り……更に微妙だが異質な存在感を漂わせ始めた家に構わず、犬が一頭飢えていた。 スラム街で生まれたこの犬は兄弟たちと、そして母親を喪いながらも、どうにか成犬になるまで生き延びてきた。しかし最近ライバルや捕食者達との争いに敗れて餌を得られず飢えに苛まれ、いつの間にかこの場所に行きついたのである。