「IDOLiSH7になるまで、世界がモノクロでした。パーフェクト高校生だなんて呼ばれる程度に、努力でどうにかなることは、たいていできます。失敗もほとんどしたことがない私にとって、世界は至極退屈で刺激のないものでした。アイドルのことを熱く語る兄さんが、キラキラと輝いていて、とても羨ましかった……けれど今は、IDOLiSH7になった今は、とても色鮮やかです。豪奢な照明の効果なんかじゃありません。皆さんという存在が、私の世界を色づけてくれたんですよ」 少し照れ臭そうな、年相応の笑みを浮かべ、大人びた瞳を輝かせて言う。「私にとってのアイドルは『極彩色』です。こんなカラフルで楽しい世界を知ってしまえば、もう戻れませんよ……四葉さんは?」「俺は……アイドルなんて、理が見つかるための手段でしかなかった」 一織に尋ねられ、環は気だるげに口を開く。 「アイドルってすっげー人気だし、テレビに出るのに近道だと思ったから。でも、理が見つかった今は、それだけじゃない。そーちゃんとのメッゾも、みんなとのIDOLiSH7も、すっごく楽しくて、踊るのも、一人でやるのも楽しいけど、みんなといるとすっげー楽しい。みんなが俺を褒めて、認めてくれるから」 親に誉められたがる子供のように無邪気に、誰よりも大きな胸をいっぱいに張って、主張する。「そんなみんながファンのこに褒められると、俺も嬉しい。で、もっともっと楽しくなる。俺にとってのアイドルは、うまくいえないけど、そういうことなんだ」「タマはもうちょっと上手く話をまとめような」 「うっせーよ。そういうヤマさんはどうなんだよ」 茶化すように柔らかく諭す大和に、環は聞く。 「俺か? 俺はそうだな……『最高の暇つぶし』ってとこだな」 「ヤマさんこそわけわかんねーじゃん」 どこまでも素直な物言いの環に、大和は苦笑いをするも不快な様子はなく上機嫌に答えた。「俺の人生は紆余曲折してて、まーお兄さんもいろいろ思うとこあってアイドルになったけど、いやーなことが全部吹っ飛んじまうくらい、最高な時間を送れてるってことよ」 屈託のない笑みを浮かべて、飾らない自身の言葉で大和は言う。「お前らといると、いつもトラブル続きで飽きないし、汚い感情を思い出す暇も与えてもらえやしない。だから『暇つぶし』ってな。……ソウは?」「僕は、『僕らしくなれる場所』です」 話をふられることがわかっていた壮五は、自信をもって口にする。