第 4 に,使用者・使用者団体の行為について,使用者団体が団体交渉の当事者として労働協約を締結し,複数の使用者(事業者)間で共通した労働 条件等の基準を定めることは,労組法が当然に想定することであるため独 禁法の適用はない一方54),使用者・使用者団体が独禁法上の事業者である など労働者とは本質的に異なる性質・立場を有することを考慮すれば,団 体交渉等を通じて商品・役務市場の競争を阻害ないし制限することは,労 働者の労働条件等の基準の向上を名目とした競争制限行為であるため,独 禁法違反行為として規制されるべきであると説かれる55)。また,使用者・ 使用者団体によるその他の行為ついては,当該行為が関連市場の競争を阻 害ないし制限する場合には,当該行為が労組法の目的に適うものであるか 否か,労組法の目的の達成手段として相当なものであるか否か等を検討の 上,労組法と独禁法の法益を比較衡量して独禁法違反の正否を判断すべき であると説かれる56)。