「ねぇ、楽。忘れてるようだから教えてあげるけど、今のボクの状況わかってる? もうすぐボクの人生かけた結婚式を控えてる身なんだけど。 色々忙しいって知ってるよね?ボクがどれだけこの日を待ち望んでたかって事も」『それは・・・』天の言葉に込められた真剣さにややその勢いを弱めた口調で、別に忘れてはいないし 悪いとは思ってる・・・と答えながら『お前がここまで来るのに払った努力は並大抵なもんじゃないって、俺だって傍に いて見てきたんだからわかってるつもりだ。その原動力が何かもな・・だからこそ 今まで積み上げてきたものを蔑ろにして欲しくねーんだよ』お前が俺達の・・・組織のトップなんだから。 天の事情も理解しているが、上に立つ者であるという自覚を持てと促してくる楽に「わかってる・・・」言われるまでもなく責任の重さを承知している天は、諦めたようにため息をつくと 「問題の件はもう一度ボクの方でも検討してみるから待って」 今ここで話していても埒があかないとして、詳しい内容は近日中に会社へ行った時に 聞くからと改めて連絡する旨を楽に伝え早々に会話を打ち切ったのだが――― 内心自分の思ったように物事がいかないのを面倒に感じつつも、これも全て陸を 得るためのプロセスだったのだからと、先日の楽とのやりとりを思い返していれば 次第に頭痛までしてきた。ふらつきそうになる自分の身体に叱咤しながら天は 脳裏に本当の事を何も知らずにいる愛しい伴侶を思い浮かべて「・・・今は少しでも陸の傍を離れたくないんだけどな・・・」