「いいなー……。クソがっ」「お前な……。子供に嫉妬すんなよな」 呆れたナルモがタランを窘める。「んなこと言っても、欲しいもんは欲しいんだよ。王様ってガキ共に甘すぎるよな」「なにを言ってんだいあんたは!」 駄菓子屋の奥から姿を現したのは、店主である獣人のモリ婆さんである。周りには小さな子供たちが引っつき虫のように群がっている。「いつまでも子供相手に嫉妬してないで、これでも食べな」「俺はきなこ棒を……ってなんだよこれ?」「わらび餅だよ。王様から色んな子たちに試食させて、感想を聞いてくれって頼まれてるのさ」「これって本当に食えるんだろうな? なんかスライムみたいにプルプルしてるぞ。おっ! きなこがかかってるじゃねえか!!」一見スライムのような見た目に警戒するタランであったが、大好きなきなこがかかっているのを見るや、興奮して鼻息を荒くする。「黙って食いな!!」 グチグチと文句を垂れるタランの頭をモリ婆が叩く。「いってえなぁ……」と言いながら、タランは爪楊枝でわらび餅を一つ口の中へ放り込むと。「ん、んん……ひんやりしてて、モチモチしてて、甘くて……こりゃなかなか……いやいや、美味いな! モリ婆、これ美味いな!!」 タランが美味そうにわらび餅を食べるのを見て、ナルモも食べ始める。変わった食感に驚きながらも、気づけば二人とも、あっという間にわらび餅を完食する。「モリ婆、これもっとくれよ」「私は試食って、言っただろうに」「金なら払うからよ」「ダメだよ。他の子たちにも食べさせるんだからね」「なんだよ……。腹いっぱい食いてえのに。王様ももっとたくさん作ってくれればいいのにな。そういうとこケチだよな」「ケチで悪かったな」