瞬間身体を包み込む光が強くなって 小さな粒子が陸の身体を包んでいく。 その光は闇を照らす蛍の光にも似た 温かい光だった。やはり神様は君を連れて行ってしまうのかそう思ったとき「てんにぃ!」名前を呼ばれると同時に唇に冷たくて柔らかい感触がした。長い睫毛が、赤い髪が静かに揺れて 目を閉じる「…………陸のファーストキス。天にぃにあげるね。」自慢気な顔をした陸は頬を赤く染めながら えへへ、とはにかんだ。「…………っ…ばか……。」時間は待ってはくれまいと 胸元まで消えかかってきている。「…りく。たくさんの…思い出を僕にくれてありがとう。……あいしてるよ。」絡み合うように握っていた陸の手の感触もない。「…っ…だから…そういうの…はんそくだっ…てば……。」涙を浮かべゆっくりと閉じていく陸の瞼にキスをする大切なたった一人の弟は満面な笑みを零して口をうごかした゛おれも、あいしてるずっとずっと。‘‘ ばいばい…。「‥‥‥‥っ…ばい…ばい……。」窓から強い風が吹きレースのカーテンを揺らす。反射的に目を瞑り再び目を開けるとそこに陸の姿はなかった。