いう事以外、人間性がどうであるとかの話は一切入ってきていなかった。 もっと極端にいえば「九条」という姓だけで顔や名前さえ聞かされていなかった 陸は、これからの長い生涯を共に生きていく人について知りたかったのだ。「・・・すみません・・・それも申し上げる事はできないんです。 他の者に尋ねられても同じですので、どうか留め置いて下さい」徹底した守秘義務を強いているらしいこの家の在り方に、少しの閉塞感と 本当はご当主様に自分は望まれていないのではないかという疑念から 沈む気持ちでわかりました・・・と俯き答える陸へ天が迷うように「・・・ですが、ただ一つ申し上げられる事があるなら、ご当主様はこの婚姻に 関して大変喜んでいらっしゃいます。貴方を幸せにしたいお気持ちで一杯で、 今日ここにお迎えする日を一日千秋の想いで待っておられました・・・ ですから、どうか主の心を疑わないで下さい!必ず貴方を幸せにしますから!」強い口調で訴えかける天の勢いに目を丸くしながら、陸はふっと吹き出すと