「そうよね、クリムト?」 にこりと微笑むクライアのこめかみに、クリムトは複数の怒りマークを幻視した。 クライアは、今しがたの上席ゴズに対する弟の態度に看過できないものを感じたようだった。この姉は怒らせると怖いと知っているクリムトは内心でひるむ。 くわえて、先の受付嬢たちに「自分たちに指図するなとエルガートに伝えておけ」と宣言したのは他ならぬクリムトである。その発言に沿った姉の提案だ、うなずく以外に選択肢などなかった。「……まあ、それなら文句はないよ」「他にもいわなければならない言葉があるでしょう?」「………………申し訳ありません、司馬。言葉が過ぎました」「私からもお詫びいたします。弟の無礼をお許しください」 そういって深々と頭を下げるクライアと、明らかにふてくされながらも姉にならうクリムト。 いつもどおりといえばいつもどおりのベルヒの姉弟の姿に、ゴズは苦笑するしかなかった。