「……どうしたら、仁をもとに戻してくれる?」 桃は戦闘体勢を解いて、ゴルゴンに問いかけた。拳を解き、両手を広げて抵抗の意思が無いことを示す。今の桃にはこうするほか無かった。 「この子をもとに戻してほしいんですの?」 「うん……。私にはなにしてもいいから、だから仁をもとに戻して!」 「うふふ、そうですの。そんなにこの子が大事ですのね。分かりましたわ。だったらあなたを私の好きにさせてくれたら、この子を返してあげてもいいでしょう」 「本当!?」 「もちろん。ただし、約束を違えば、どうなるか分かりますわね?」 「う、うん……分かってるよ! 仁を助けてくれるんなら、私はどうなってもいい……!」 ゴルゴンの言葉に不穏なものを感じて身を震わせつつも、桃は勇気を振り絞るようにしてそう言う。 仲間のためだ。どんなつらい責め苦にだって耐えてみせる! その鋭い牙を突き立てられようが、石にされようが、なんだっていい! そんな健気な桃の姿を見て、ゴルゴンは満足げに笑っていた。 「それでは、これから私の言うことを実行してください」 「うん……!」 「まずはその、邪魔なスーツを脱いでくださいな」 「……へ?」 いきなり予想外のことを言われて、桃は思わず間抜けな声を漏らしてしまった。 「聞こえませんでしたか? あなたが今着ているそのスーツを脱げと言っているんですの」 ゴルゴンは焦れったそうに、強い口調で繰り返した。 予想の斜め上をいく身の危険を感じ、桃はぶるっと身体を震わせた。 ――続く――