ね?とまるで子供のころに戻ったときのように諭されて、俺の中の不安や痛かったところを綺麗さっぱり拭い去っていってくれた。言葉で傷ついてしまった部分は言葉によって癒されていった。「克ち得た・・・かぁ。そんなこと考えたこともなかった。 俺、自分は何も持ってないってずっと思ってたからそんなこと考えたこともなかった。でも・・・本当、そうだよね。まず俺が俺自身を信じてやらなきゃダメに決まってる。やだな、本当俺どうしちゃったんだろ。 天にぃと離れてた間になんだか後ろ向きに考える悪い癖ついちゃったのかな・・・。」いや、違う。それはきっと世の中にはどうにもならないことがあるって、諦めた方が楽になることもあるっていうことを俺は知ってしまったからだ。家族が一人、二人といなくなって気付いたら独りで。俺一人がどう頑張っても戻らない”現実”動かない”事実”を目の当たりにして諦めを知った。子供の頃のように物事を無心に信じることが出来なくなった瞬間だった。たった独り残されて、独りで迷走するしかなかった。そして先が見えない日々に不安ばかり募って、どう頑張ればいいのかも分からなくなってた。それはまるで夜明けがこない夜道を独り彷徨うような気分で、ずっと誰かに行き先を少しでもいいから照らしてほしかったんだと思う。『独りで見る夢より、二人で見る夢。』そう言われたとき胸が熱くなった。見えない道の先に灯りが見えた瞬間燈された灯りは不安や孤独の影をうち消していく。「安心して。そんな癖すぐに叩き直してあげるから。」ふと見上げれば悪戯っぽい笑みを浮かべた天にぃの顔。胸が温かい。確かな灯りが満ちていく。「頼りにしてる!やっぱり天にぃはすごいな。ちょっと話しただけなのに凄く身体が軽い。 なんだか今ならしっかり言い返せる気がする。俺は天にぃと一緒の未来がいいって。」そう、今なら迷わず心から言える。この胸の温かさが消えない限り俺は大丈夫。