先程見た時よりもテンの黒い片翼はさらに黒くなっているような気がしたヤマトはそう尋ねる。恐らく、分け与えるたびに黒くなるのだとしたら、黒ければ黒いほど彼らは命を与え、与えられることを繰り返しているのだ。「忘れてしまったよ。ボクにとってリクが死んでしまうことが何よりも耐え難い苦痛だから数えることすらしていない。」 「その黒さだと両翼が黒くてもおかしくない。」 「それは罪の半分をオレがもらっているから。テンにぃを堕とさないために。」 「だから半堕天使・・・」天使であるが半分は堕ちてしまっているから皮肉を込めて呼ばれているテンとリクを指す呼び名だ。だが、テンとリクはどう呼ばれようと構わなかった。「どんな形であれリクと共にいれるのであればボクはなんだってする。」 「どう呼ばれたってテンにぃがしたことは全部オレが肯定する。」 「・・・こりゃあいつが言った通り戻れないな。」二人の固い意志を目の当たりにしてヤマトは悟る。たとえ地上に蔓延る悪魔を殲滅したところでリクの命を脅かすことがあればテンは迷いなく命を分け与えるのだろう。とそこまで考えてふと疑問が浮かぶ。 何故リクが瀕死にあうことが多いのか。 確かに悪魔討伐は一筋縄ではいかないうえに常に命の危険と隣り合わせだ。しかし彼らの戦闘スタイルは主にガクが近接攻撃をしてその後方支援をテンとリクがしていると聞いたのだ。「なぁ、なんでリクが、リクだけが瀕死になるんだ?」 「・・・ヤマトでもこれ以上は話さないよ。」 「これはオレたちの問題だから。ヤマトさんを巻き込むわけにはいかない。」そう言ってそれ以上は何も言わなくなってしまった二人に線引きをされる。これ以上は踏み込んではならない境界にきてしまったことにヤマトは悪かったなと謝る。それに眉を下げながらありがとうと述べた二人が唯一踏み込むことを許しているのがガクただ一人だけなのだと知る。「とりあえずさっきのところに戻るか。こうなると森の中も安全じゃない。ガクもただの生身じゃあの悪魔に太刀打ちできないだろ。」 「ヤマトが知るガクは一年前のままなんだね。」 「ガクさんは別にオレたちがいなくても悪魔を倒せるよ。」 「は・・・?」何を、と口を開いたところで地響きが起こる。バッと悪魔がいる方向に視線を向ければ轟々と燃え盛る炎の火柱が立っていた。嘘だろ、と溢したヤマトにテンとリクは現実だよと笑って答える。何が起きているのか確認するためにもヤマトたちはガクのもとへ戻る。