真弘の横顔がひどく哀しそうに見えて、珠紀は思わず彼の手を握った。……生まれた時から、世界のために死ぬことを宿命づけられてきた、真弘。ずっと、この狭い村の中に閉じ込められてきた彼にとって――ここから見える花火は、外の世界にある、手の届かない美しいものの象徴だったのかもしれない。「……けど、ずっと明日は死ぬかも、って思いながら生きてた俺が、今日こうして十九になって――生きたまま、村を出られるようになって。いろんなとこ行って、いろんなもの見たけど……やっぱこうして、ここからまたこの花火を見たいと思うんだな」真弘は、珠紀の手を握り返した。「ま、こーして今年も花火が見れんのは、お前のおかげだ」「……家に、お祝いのケーキあったんです。……持ってきて、ここで食べればよかったですね……」「――いや、お前が隣にいるのが、一番だろ」……さりげなく、呟く。その真弘の一言で、珠紀が心のすみに抱えていた、小さな不安はすうっと消えていった。大丈夫だ。たとえすれ違う時間が増えても、二人の居場所が変わっても……心はずっと、同じところにある。