「一応、今回は俺も均等に相続しますが、その半分を智之叔父さんの治療費に充ててもらいたいと思ってます」明仁は驚 愕する。まさか、雅紀がそんなことを言い出すとは思ってもみなくて。 「いや、ちょっと......待て。雅紀、それは......」 上手く口が回らない。(いくらなんでも、それはさすがにマズイだろ) なんだか、焦る。瑞希に保険金の一部を分けることとはまったく別の問題だからだ。 すると。 「出しゃばりすぎですかね?」 雅紀がほんの少しだけ口の端を和らげた。 それだけで、怜悧な美貌に昔ながらの面影が重なって見えた。今はもう喪われてしまった、子どもの頃の柔らかな表情。 ゆるやかで。 しなやかで。 寛容さに満ちて。 そして、少しだけ大人びて。 皆に愛されて幸せだったあの頃の顔付き......。 (いきなりその顔は反則だろ) 思うと同時に、何も言えなくなった。 「智之叔父さんの病状が長引けば長引くほど、家族の負担も大きいでしょ? 精神的にも経済的にも......。ぶっちゃけ、金のない苦労は身に沁みてますから」