粗末な着物を――はっきり言ってしまえばボロ布だけをまとったクライアの首筋や、むき出しになった二の腕、太ももには鞭で打ち据えられたとおぼしき傷が幾重にも走っている。いくつかの傷には赤い血がにじんでおり、古傷ではないことがうかがえた。 ――もし、クリムトに今の姿を見られたら大変なことになりますね。 かすむ意識の隅でそんなことを思い、つい微笑んでしまう。きっと傍から見れば、顔をひきつらせているようにしか見えないでしょうけれど、などと余計なことも考える。 もしかしたら、それは全身を覆う苦痛をやわらげるための本能だったのかもしれない。 そのとき、また地面が揺れた。床が、壁が、天井が、悲鳴のような軋きしみをあげる。 あるいは、ここで土に埋もれて果てることになるのか、とクライアがぼんやりと考えたときだった。 音が聞こえた。カツ、カツ、カツ、と力強く床を踏みしめる音が聞こえてきた。 一つ一つの牢を確かめているのか、その音はときおり立ち止まりながら、ゆっくりと、しかし確実にクライアの牢へと近づいてきて――「ひどい姿だな、おい」 どこか呆れたような声と共にあらわれた御剣みつるぎ空そらの姿を見て、クライア・ベルヒは紅い目をまん丸に見開いた。