『ぎゃいんっ!?』「っ!? ……?」『でも、下手すると死んじゃいますからね』 その数秒の出来事に、犬の霊を蹴散らして間に合ったバンダーは、柔らかい脂肪を増やし更に衝撃を吸収する体毛で包んだ手を子供の後頭部と地面の間に差し入れたまま、そう呟いた。 落ちる瞬間に、その手だけを【実体化】させたのである。 異変に気がついた子供の母親が駆け寄って来た。痛みが無く後頭部に触れたもこもことした柔らかい感触に戸惑う子供を抱き上げて、怪我をしてないか確認している。「ばんだーっ♪」 それと交代で戻ってきたバンダーをはしゃいだ様子の冥が迎える。「打ち所が良かったみたいね。怪我が無くてよかったわ」「ええ、本当に」 子供に怪我が無さそうな事に安堵する成美達の様子を見て、バンダーはなるほどと呟いた。『やはり欠片を操作するだけなら、雨宮成美にも感知されないみたいですね』 バンダーにとって最優先すべきは冥だ。更に、冥以外には自分の存在は出来るだけ隠し通さなければならないとも思っている。他人の命を守る事でも、ましてや正義の実践でも無い。 しかしそれは冥以外の誰も助けず、何もしないで見捨てると言う事では無い。『力ある者には責任が伴う……なんて考え方は嫌いですし、めー君に教えるつもりはありません。ですが簡単に人を助けられるのに、それをしない俺の姿を見せ続けるのは教育上問題です。これから彼女が身に付けるべき社会的道徳や情緒、他人に共感する能力の発達に大きな障害になるかもしれない』 誰にでも優し