「先に行くわ」 同期生たちに声をかけるや、アヤカは征矢そやのごとく宙を駆け、一路西の城壁へと向かう。 ほとんど一瞬で視界から消えたアヤカを見て、祭さいがお手上げだというように両手をあげた。「あいかわらずふざけた能力だよな。剣の腕だけでも厄介なのに、空から好きなように攻撃できるとか、あんなのに勝てるわきゃねえっての」「ぼやくな。強力だからこそ制御も難しいことは知っているだろう。あれはアヤカでなければ扱えない。俺たちは親からもらった足を使うぞ」「へいへい。てかクリムト、無理すんなよ? 空のやつに骨を折られたんだろ」「とっくに治ってる。気づかいは無用だ」「ほら、二人とも、おしゃべりしてると置いていくよ」 それぞれに好き勝手なことをしゃべりつつ、黄金世代の四人はまったく同時に勁けいを発動させ、地面を蹴る。 四人分の勁けい圧あつに耐えかねたように、地面が大きくきしんだ。 この日、柊都しゅうとに迫った魔物はコーラルワーム。 その名のとおり、外見は珊瑚色コーラルをした長虫ワーム、つまりは蛇である。ただ、鱗はなく、顔の部分も長い地中生活に特化して口の形になっているため、実態は蛇というよりミミズに近い。 島外におけるコーラルワームは最大でも二メートル前後までしか成長せず、さらに地中深くに棲息しているためにめったなことでは人前に出てこない。 しかし、鬼門の魔力にあてられた鬼ヶ島種は最大で五メートル以上に成長するため、エサを求めて精力的に地上に姿をあらわす。 ワームはワイバーンと同じく竜の眷属とされており、強力な再生能力を有している。このため、小型の幼生はともかく、大型のワームを倒すのは青林旗士といえど簡単なことではなかった。なにしろ、身体を燃やそうと、凍らせようと、真っ二つに両断しようと動きを止めないのである。 このため、大型のコーラルワームを倒すには、心装使いが数人がかりで挑む必要があった。 ところが、この日にかぎってはその必要がなかった。すべての大型をアヤカ・アズライトがひとりで葬り去ったからである。 アヤカの心装によって斬られたワームは再生能力が発動せず、常のしぶとさに比べればあっけないほど簡単に死んでいった。 むろん、これはアヤカの心装の能力による。 カルラとは神代の空を飛んだ霊鳥にして、すべての竜の天敵たるもの。 人に悪逆をなす竜を喰らった、竜喰らいドラゴンイーターの名前である。