701号室の中で陸はベッドに座って準備をしていた。とろけるような甘い顔でイヤフォンをつけてスマフォに魅入っている。 「お待たせ。陸」 ドアとイヤフォン越しにインターフォンの音を拾って、腰を上げた。ドアを開けると熱に浮かされた顔の天が居て、その姿に無邪気に微笑む。 「ううん。忙しいのにごめんね?」 「いいよ。早くシよう」 陸の横をすり抜けて天は足早にベッドに向かう。陸もその後をゆっくりと追う。二人で並んでにベッドに座り、天は上着を脱いだ。腕まくりをして真っ白な腕を出す。ふわふわと柔らかそうなのに陶器のようにツルリとしている。天はカバンからやや乱雑に消毒液を出して、手指に垂らして、右腕全域に伸ばしていく。一連の動作を終えてから、陸に腕を差し出す。陸は悩まし気にうっとりとした吐息をついて、両手で恭しく天の腕を持って思い切り牙をたてた。 「…ッ!」 「はぁ…あ…ん…」 骨まで届く牙の痛みの奥に潜む快感を必死に手繰り寄せる。 (薬、飲んでおいて正解だったな…) 陸には見えない方の左手は汗をにじませながらシーツを握った。