四つ年下の魔法の国ラグドール王国の王太子ミハエル・ラグドールの話を聞いてセドリックは肩の力を抜いた。ミハエルはその姿を見て苦笑するが、セドリックにとってエリィは手離したくない存在だ。笑われようが、安堵した気持ちを隠すつもりはない。
「しかしセドリックの言っていた通り所作と言葉遣いが綺麗すぎる。シンディを真似ていると言っていたが、あれはもう板についている領域だ。ただの平民とは思えない気持ちは分かる」
「はい。丁寧語どころか敬語まで使える……スラム育ちとは簡単には信じられませんよね」
特にドレスを着てウォーキングを難なくこなす姿は、素人とは思えないほどの身のこなしだった。ターン時の軸のぶれなさは社交界の令嬢と遜色ないどころか、上をいく。
「案外アビスの前はユースリア王国の悲劇の伯爵令嬢だったりしてな」
「悲劇の伯爵令嬢?どういうことですか?」