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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなのだ~/くまなの
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62 クマさん、チーズを手に入れる
この小説は特に目的もなく、ユナが異世界で満喫するお話です。
「あと、クリモニアの街のギルドマスターから手紙を預かって来たんだけど」
わたしのトラブルを防ぐために預かった手紙だ。
結局、トラブってしまったけど。
「ラーロックからね」
ギルドマスターの名前ラーロックだったんだね。
今、知った。
知っても、今後も呼ぶことはないと思うけど。
ギルドマスターで通るし。
サーニャさんは手紙を読んでいく。
「了解。あなたのその格好で冒険者に絡まれる恐れがあるから気をつけてほしい。そして、出来れば絡まれないように手を貸してやってくれと書かれているわ。確かに、毎回トラブルを起こされてもギルドとしては困るから、冒険者にはちょっかいを出さないよう伝えておくわ。あなたの戦いを見ていた冒険者もギルド職員もいるからすぐに広まるでしょう。それでも、ちょっかいを出してくる馬鹿がいたら、わたしがなんとかしてあげるわ」
「助かるけどいいの? 基本、ギルドは冒険者同士の争いには関わらないんじゃなかったの?』」
「ギルド全体のルールとしてはそうだけど、その場所のギルドマスターの方針によって違うわよ。無関心のギルドマスターもいれば、特定の冒険者を贔屓するギルドマスターもいる。わたしは自分が冒険者をやっていた分、女性冒険者の苦労が分かるから 、女性冒険者の味方」
「なら素直に礼を言っておく。ありがとう」
「礼なら、高ランクの仕事をしてくれればいいからね」
「それが本音?」
「だって、タイガーウルフ、ブラックバイパーの単独討伐なんて聞いたことないわよ。それがランクDなんて信じられないわよ」
「まあ、冒険者になって2ヶ月ぐらいだし、そんなに多く依頼も受けてないからね」
「ランクCの依頼もあるから、受けていいのよ」
「うーん、今日は帰るよ。まだ、王都見物も途中だし」
「あら、そう。残念」
「それで、王都を見物したいんだけど。珍しいものが売っている場所ってどこかあるかな?」
「珍しいもの?」
「食材でも、道具でも、なんでもいいんだけど」
「そう言うことは商業ギルドが詳しいんだけど。でも、今なら西地区かな。いろんな店が並んでいるし」
「西地区ね。今度行ってみる」
ギルドから出て昨日行った露店を見に行く。
露店に着くと、買い食いしながら眺める。
露店の数が多くて、ゆっくり見ていると数日では見終わる気がしない。
しばらく、見ていくと見慣れた後ろ姿が見える。
「フィナ、ノア。何を見ているの?」
露店を見ていた二人に声をかける。
「ユナお姉ちゃん、どうしてここに」
「ギルドへの報告が終わったからね。それで2人は何を見ていたの?」
何か前の方が騒がしい。
「おじいさんが変な食べ物を売っているとかで騒ぎになっているみたいです」
「変なもの?」
「なんでも、カビが付いた食べ物らしいです」
うん、それって?
わたしは2人を退かして前に出る。
こには露店の前でお爺さんと若い男の人が喧嘩している姿があった。
「なに、そんな物を売っているんだよ。周りが迷惑するだろう!」
「これは、ただのカビではなくて」
「カビはカビだろう!」
「これは中を食べる物でして」
「そんなカビが発生した物食えるかよ!」
わたしが見たそれはチーズだった。
チーズだよ。チーズだよ。
そのまま食べても良し。
パンに挟んで良し。
何よりもピザが作れるよ。
あとグラタンも食べたいな。
でも、グラタンは無理かな。
「二人とも、あれチーズだよ」
「ちーず?」
「知らないの?」
「はい、知りません」
「わたしも知りません」
二人とも知らない。
と言うことは滅多に手に入らない物ってことだ。
これは是が非にも手に入れなくては。
「ですから、これは食べ物なんです」
「こんなもの誰もくわねえよ!」
二人は言い争っているが男が一方的にお爺さんに文句を言っているだけだ。話を聞こうともしない。
わたしはその口論にしている2人の間に入る。
「お爺ちゃん。それチーズよね」
「そうじゃが、知っているのかい。可愛い格好したお嬢ちゃん」
「なんだ。いきなり、出てきて。小娘でも邪魔をするとただじゃおかないぞ」
「うるさいわね。わたしはお爺ちゃんと話しているのよ」
「貴様・・・・」
男はわたしの肩を掴もうとする。
どうして、この世界の男はすぐに暴力に訴えるかな。
わたしは腕を掴み、もう片方の手で男のお腹にクマパンチを入れる。
男は体をくの字に曲げると倒れてしまう。
気を失っているが手加減はした。
「ふう、これで静かになった。それでお爺ちゃん、それチーズだよね」
わたしは何も無かったかのようにお爺ちゃんに話しかける。
「ああ、そうじゃが」
お爺ちゃんは倒れている男とわたしを見比べている。
「お嬢ちゃん、チーズを知っているのかい」
「牛乳を醗酵させるんだっけ、詳しい作り方は知らないけど」
「そうじゃよ。若いのによく知っているのう」
「お爺ちゃん、味見してもいい?」
「もちろんじゃ、食べてみてくれ
」
お爺ちゃんはナイフで、チーズを薄く切ってくれる。
「ユナお姉ちゃん、食べるの?」
フィナが心配そうに聞いてくる。
それはそうか、カビが生えているものを食べようとしているだから。
「大丈夫だよ。カビは表面だけだから」
私はもらったチーズを口にする。
ちょっと味が濃いけど間違いなくチーズだ。
「お爺ちゃん、これ、売っているんだよね」
「ああ、村で作ってお金が必要になったから、チーズでも売ろうと王都まできたのじゃが、誰も買ってくれなくてな」
やっぱり、この世界ではチーズはあまり広まっていないみたいだ。
さっきの男といい。フィナもノアも知らなかったし。
「それじゃ、つまり、わたしが全部買ってもいいんだよね」
「嬢ちゃん。買ってくれるか?」
「値段しだいだけど。いくらなの?」
「本当は重さで売るんじゃが。一塊、これくらいだ」
お爺さんが提示した金額を見て。
「買うわ。全部頂戴」
即決で買う。
交渉が成立すると、後ろが騒がしくなる。
見回りの兵士がやってきたらしい。
「ここで喧嘩が起きていると聞いたんだが。クマ……ユナさん」
現れたのは盗賊団のときにお世話になったランゼルさんだった。
「ユナさん、ここでなにをしているのですか。それにここで喧嘩が起きていると聞いたのですが」
「買い物よ。そこの男がお爺ちゃんの食べ物に文句を言ってきたのよ。それで口喧嘩になって、わたしが割って入ったんだけど、襲い掛かってきたから気絶させたのよ」
「ユナさん、何をしているのですか?」
「お爺ちゃんを守った正義の味方?」
首を傾げて疑問形で答えてみる。
「わかりました。今回は目を瞑つむりますが。今後、暴れないでもらえると助かります」
「わたしだって好きで殴ったわけじゃないわよ。襲われたから殴ったのよ」
「本当なら、ユナさんには詳しい話を聞くために兵舎に来てもらうところです。グラン様とエレローラ様の関係者ですので、今回は連れて行きませんが、トラブルは止めてくださいね。それでなくてもトラブルが多くて大変なんですから」
権力って味方だと頼もしいな。
敵だったら怖いけど。
「それでは、自分は行きますので」
ランゼルさんは頭を下げると気絶している男を部下に運ばせ、去っていく。
わたしはお爺さんとチーズの話を再開させる。
「お嬢ちゃん、そのよくわからんが、ありがとうな」
「いいのよ。わたしもチーズが欲しかったしね。それで全部売ってくれるの?」
「もちろんじゃ、こちらも助かる」
「もし、まだあるなら買うよ」
「わしが持っているアイテム袋ではあまり、入らなくてな。それでも持てるだけ持ってきたから、これで全部だよ。村に行けばまだ、たくさんあるがのう」
「そうなの? それじゃ、村の場所教えて、今度買いに行くから」
「それは嬉しいが、そんなに必要なのか。これだけでもかなりの量があると思うが」
「ちょっと、孤児院の子供たちの面倒を見ててね。今度このチーズを使った料理でも食べさせてあげようと思ってね」
「そうか。わかった。村に来るなら歓迎しよう」
「ありがとう」
「いや、礼を言うのはわしの方じゃ、ありがとう。このまま売れなかったら困っていたからのう」
「そうなの? それじゃ、少し多めに払っておくね」
「よいのか」
「いいよ。その代わり、村に行ったら安く売ってね」
「ああ、もちろんじゃ。王都に来ないですむぶん、こちらも助かる」
お爺ちゃんに村の場所を聞いて、買ったチーズを全てクマボックスに仕舞う。
お爺ちゃんと別れてフィナとノアと一緒に露店を歩いている。
「ユナさん、先ほどのちーずでしたか、本当に美味しいのですか」
ノアが嬉しそうにしているわたしに聞いてくる。
「うーん、人それぞれじゃないかな。わたしはパンに挟んでも好きだし、ピザにしても美味しいし。でも、匂いや味が嫌いな人もいるからね」
「その、……わたしにも食べさせてもらうことはできますか」
「平気なの?」
「はい。ジャガイモのときもそうでしたが、ユナさんのことは信じてますから」
「なら、帰ってピザでも作ろうか。ピザならほとんどの人が好きだから」
「わたしもユナお姉ちゃんのことは初めから信じてますよ」
2人の会話を聞いていたフィナが賛同してくれる。
「ありがとう、2人とも」
クマボックスに入っている食材を思い出しながら、ピザに足らない食材を買い込んでクマハウスに帰ることになった。
>目次
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