「じゃあなんでそんなに辛そうに答えるんだ」「なんでと言われましても…………」 セドリックに追求されるが、それ以上は答えられず見つめ返すので精一杯だ。彼がぐっと奥歯を噛んだと思ったら、エリィは強く引き寄せられ腕の中に収まった。「エリィは僕のだ」「――――っ」 いつもしている抱擁だけど、いつもより苦しい。それはセドリックの抱き締める力が強いのか、それともエリィの心のせいなのか分からない。 セドリックに求められているのに、自分とは違う理由だという現実が辛い。この腕の中の温もりが、自分のものでないことが悔しい。頭で分かっていても、他人のものになることを想像しただけで身が引き裂かれそうだ。 エリィはもう感情を抑え込めなかった。「ぐずっ」「――――っ、エリィ」 セドリックが慌てて体を離し、エリィの表情を見て狼狽える。彼女の青い瞳からは止めどなく大粒の涙が溢れ、頬を濡らしていた。「そんなに…………僕の側は嫌なのか?」「違います!嫌なはずがありません。これ、はっ…………私が悪いのです。私が愚かで…………私の問題なのです。申し訳ありませんっ」「では何故泣いている。何が君を苦しめているんだ!」「申し訳ありません。申し訳ありません…………どうか聞かないでください。お時間をくだされば…………終わればっ…………いつもと同じようにしますから」 エリィはこれ以上心に踏み込まれるのを恐れ、ソファから立ち上がり扉を目指した。 引き留めようとするセドリックの手は間に合わず、空を掴んだだけ。「エリアル・アレンス――――?」 彼の絶望した声色がエリィの耳に届くことはなく、扉は勢いよく閉じられた。