陸の手を引き、ボクは控室の方へと歩みを進めた。すれ違う兵士達が敬礼をしながらボクとボクが手を引いて一生懸命歩く陸を見て来る。この軍施設の中に子供がいる事自体がおかしいのだから仕方がない事だ。 だけど陸は見世物何かじゃない。ボクは陸へと振り返り、陸の脇の下へと手を差し入れると抱き上げる。そうして陸を抱き締めながら控室のある方へと急いだ。「陸、ちょっと急ぐけど大丈夫?」 「ん?大丈夫」 「良い子・・・」 漆黒の軍服を翻し、ボクは控室の扉をくぐった。「おー。遅かったな、九条」 控室の扉を開けると、ソファーに堂々と座り、龍が煎れた紅茶を啜っている『アイドリッシュセブン』のリーダー、二階堂大和がいた。ボクはこの人が苦手だ。何を考えているのかが分からない。そして、その隣には申し訳なさそうに座っている『アイドリッシュセブン』のメンバーで和泉三月と同じ副隊長の逢坂壮五がボクを見て頭を下げた。ボクも軽く頭を下げると、『アイドリッシュセブン』の向かい側に座っている楽の傍まで行くと、丁度、龍が新しい紅茶を煎れて戻って来た。「お疲れ、天」 「良い香り・・・ボクにも頂戴」 「そうだろうと思って煎れておいたよ。陸君は飲めるかな?」 「どうだろう・・・あ、でも今、陸の口の中に和泉三月から貰ったキャンディーが入っている」 コロコロと口の中に入っているキャンディーを嬉しそうに舐める陸が龍の煎れた紅茶のカップをじっと見つめる。「陸、紅茶欲しいの?」 「ところで、お前さんら、俺達の存在忘れてね?って、いうかその子供誰よ?」 空になった紅茶のカップをくるくると回しながら、二階堂大和がボク達に問いかけて来た。あ、そう言えば居たんだ。「何だ、まだいたの?二階堂大和」 「おいおい、そりゃないんじゃないの?お兄さんずっと待ってたんよ?」 「誰も待っていてとは言ってない」 「相変わらずの塩対応でお兄さん泣いちゃう」 「何変な事言っているの?逢坂壮五・・・この人どっかやって」 「え?え?」 「まぁ、まぁ、とりあえず紅茶が冷めちゃうから、ね」