怒りのままに叫んだ後で、場にまた静寂が満ちる。隣で僕に触れるシエスとルシャの手を意識して、心を落ち着かせる。それでも胸の奥はどうしようもなく荒れていた。 ユーリはまだ僕を見ている。弱々しい瞳。泣き出しそうな色。けれど唇を引き結んで、何かに耐えるように震えながら、僕から目を逸らさない。 このユーリは、いつか見た。……王都で決別を口にした時も、こんな風に堪えていた。溢れ出しそうな感情を意思の力でねじ伏せるユーリ。その姿は彼女の強さの表れなのか、それとも弱さそのものなのか、僕にはもう分からない。 彼女の想いを理解するには、僕はもう、離れすぎている。「…………そう、ね。今さら、私があなたに、何を言ったって。……余計な、お節介、よね」 ユーリの声は絞り出したように掠れていた。 昔なら、こんなに弱ったユーリを見たらすぐに傍に寄って、手を握っていた。けれどもうユーリの隣は僕の居場所ではない。彼女の隣にはソルディグがいて、彼が手を握っている。僕はユーリの前で、怒りを込めて決別を口にしている。 何もかもが変わってしまった。そのことを、僕はもう受け入れている。受け入れるのに時間がかかって、皆に迷惑をかけてしまったけれど。なのにユーリが、この変化を最初に受け入れたはずの彼女が、まだ僕を気にかけている。そのことが一番許せなかった。 それは僕の今も彼女の今も、僕らの過去さえも、何もかもを侮辱する思いだ。「僕は僕の生きたいように生きる。君と別れて、そう決めたんだ、ユーリ。君が僕に何を思おうと、僕は前に行く」