「水族館に行きたい?」「うん、俺ね、自分が死ぬんだって分かったときになんとなく水族館に行きたいなぁって思ったんだ。 なんでかは分からないんだけどね。」「そっか。」水族館。 それはまだ僕らが幼い頃、初めて家族3人で行くことができた場所。 そのときは珍しく陸の体調は安定していて。 二人で「すごい、すごい!」って言ってはしゃぎながら館内を回ったのを今でも鮮明に覚えている。もしかしたら、陸も体が無意識に覚えていたのかもしれない。 だとしたらもう一度兄弟という形じゃなくなっても。 一緒に行けたらいい。「じゃあいつか行こうか、水族館。」「えっ、それ本当!!?」そう言うと陸の顔は途端に満開の笑顔になって。 思わず笑ってしまう。「もちろん、僕が今までに嘘ついたことある?」「ない!!!」「じゃあ、約束ね。」「うん、約束。」そう言って固く指切りを交わした。 明日、絶対行こうね。そして昔みたいに一緒にはしゃいで楽しんで。 僕はそれが当たり前にできるものだと、思っていた。だから忘れていたんだ。 未来は「約束」を必ずしも守ってくれるわけではないということを―――――――