意を決して穴掘りドリルを買う――3万9千円也。ドリルの長さは1m、直径10㎝だ。 こんな狭い井戸では釣瓶つるべを使う事は出来ないが、ポンプを使って汲み上げるので、そのスペースだけ開ければ良い。 エンジンは2ストなので草刈機と同じ混合燃料が使える。燃料を入れて、チョークを使ってリコイルスターターを引っ張ると一発で始動。 とりあえず掘ってみる――が、手で持って使うのは大変だと解ったので、ブロックを積み上げ、そこにドリルを設置して手で押さえるように改良した。 最初の1mは簡単だったが、延長棒を次々と足していくと徐々に難易度が上がってくる。 穴を掘るのも継ぎ足し継ぎ足し、土を掻き出しドリルを上げるのも何回も分解が必要で凄く手間が掛かる。 ここで問題が起きた。引き上げたドリルに付いた土を取るのが意外と大変なのだ。 その土を吹き飛ばすために、シャングリ・ラで高圧洗浄機を購入したのだが――パワーショベルで掘った穴の中では使えない。 スペースが無いし、使えば穴の中が水浸しになって泥濘ぬかるんでしまう。 一々、汚れたドリルを穴の外へ持ちだして、高圧洗浄機を使わなければならない。俺はパワーショベルで穴を掘った事を少々後悔した。 だが掘ってしまった物は仕方ない。換えのドリルを4本追加購入して、次々と交換していく作戦に出た。 土に塗れたドリルが溜まったら、アイテムBOXに入れて地表へ持ち出して高圧洗浄機を使えば良い。 苦労しながら4m程掘ると砂の層にぶつかった。ドリルを引き上げると砂が濡れているのだ。「これなら水が出るかもな」 砂の層を掘り進めるのは簡単だ。どんどんと刃が進んでいき、1m程でまた粘土の層にぶつかった。 これは、まさしく井戸の本に書いてあった水が出る地層に合致する。 これで水が出るかというと、そうでもない。砂を掻きだして地層の内部に空間を作らないと、どんどん砂で埋もれてしまう。 ドリルでは砂を掻き出す事は出来ない。すぐに下に溢れ落ちてしまうからな。 砂を外へ出すために道具を考えて作らなければならない。 ――しかし飯も食わずにやっていたが、辺りはすでに暗くなりつつある。今日はここまでにして残りは明日にするか……。 その日の夕方はカレーにした。