「うひゃー!やばかったなー!」 「う、うん……」 射貫かれるような視線に、どきりとした。 胸の高鳴りはおさまらない。まだドキドキしている。鼓動の音をはっきりと感じる。 自分を見たとは限らない。後ろの人かもしれない。隣の人に向けた視線だったかもしれない。 目が合ったと思ったのは、私だけかもしれない。 この再会は、心の中にそっと閉まっておこう。ライブが終演し、ブロックごとに退場を促される。 順番を待っている間、辺りを見回すと、沢山の表情が広がっていた。 弾けるような笑顔。幸せを噛みしめるようなうっとりした表情。感情が高ぶって泣き出している人。 これが…TRIGGERが生み出したもの。残していったもの。 凄いの一言に尽きる。他にもっといい言葉があればそれを言いたいけれど、人の心をこんなに大きく動かせるなんて、凄いとしか言いようがない。 時間が経って、ようやく会場の外に出られた。 「あー楽しかった!」 腕を高く突き上げ、伸びをする三月。開放感いっぱいの清々しい顔つきだ。 「そうだね」 「陸も惚れただろ?TRIGGERの3人に」 「うん。カッコ良かった」 「誰か推しになった?」 「……九条天さんかな。天さんだけじゃないけど、ただ見た目がカッコ良いだけじゃなくて、パフォーマンス全部が凄くて、キラキラしてて、夢みたいだった」 「だろ!TRIGGERの良さを知って貰えて嬉しいよ!」 「えへへ。誘ってくれてありがとう」 「こちらこそ!じゃあ陸、気を付けて帰れよ!」 「うん。バイバイ」 手を振りながら別れ、それぞれの駅へと向かう。 自宅のマンションに辿り着き、自室に入ると、ほっと息をつく。 「ふう…疲れたな」 楽しかったけれど、一人になると高揚感も引いてきて、身体の疲れを実感し始める。 見慣れた自分の部屋。現実に戻ってきたと感じる。