「気をつけてね」 玄関まで見送ってくれた天に陸の心はツキリと嫌な音を立てる。兄に、恋人に嘘をついたのだ。顔が引きつりうまく笑えているか不安と罪悪感が心を曇らせていく。こんなの初めてでやっぱり行かない方がいいのかもしれない。でも友人に頼まれ頷いたときの友人の嬉しそうな顔を思い浮かべるとやはり今更行けないなどと言えない。バレなければ大丈夫。神様ごめんなさいと心の中で懺悔し行ってくるねと手を振り家を足早く出た。 陸を見送り天は自分のスマホを取り出してある人物に電話をかけた。数回コール音が鳴った後コール音が切れ無駄に良い声が天の耳に届いた。「もしもし。ボクだけど」