とたん、外から歓声が聞こえてきて、イリアは我知らず眉をひそめた。 ソラが討伐したのは一体のハイ・オークに率いられた三十体以上のオークの群れ。 それは辺境の村をたやすく蹂躙できるだけの戦力であり、その壊滅の知らせに安堵し、喜ばない者はいなかった。 歓声の理由はそれだけではない。 討たれたオークの死体はすべて、ソラからメルテの村に寄付されたのだ。 オークやゴブリンのように積極的に人間を襲う魔物には報奨金が出る。 また、魔物の死体は素材の宝庫だった。 オークの肉は臭においが強く、味にもひどいクセがあって、とうてい食用にはならない。だが、灰汁あく抜きした後に乾燥させ、穀物と混ぜあわせれば家畜の飼料となる。骨や革は道具の作成に役立ち、睾丸や心臓などは精力薬の材料になる。 報奨金と素材の売却益をあわせれば、今回の疫病でこうむった損害を補ってあまりある額になるだろう。 周囲の村からやってきた者たちは、オーク討伐を祝うためと称しているが、メルテの村が得た思いがけない「お宝」の分け前を欲して、という理由も大きかった。 利益を独占すれば憎まれる。おそらく村長は恩恵を分け与えるだろうが、これは周囲の村々への貸しとして、金銭とはまた違ったメルテ村の利益につながる。 それは宴だって盛り上がろうというものであった。