朝になれば仕事がある、歌えないから見捨てられたと言っても契約済みの仕事が消えるわけではない。それに交替になるのはセンターだけで、陸はまだIDOLiSH7のメンバーなのだ。「どうでもいい」 横に座る天の腕と体の間に自分の手を通して、腕を組みながら陸はその体にもたれる。「陸?」 「全部、どうでもいいよ。だって天にぃがここに居てくれるから」 この甘さの前ではどんな歓びも幸福もかすんでしまうと、陸はうっとりと笑う。「悪い子」 サラサラの綺麗な髪を手ですきながら、天が呟く。「じゃあ天にぃが決めて、どうすればいい子か」 甘えるように赤い瞳がじっと天の目を見た、吸い込まれそうなくらいに深いその色にお互いの視線が捕らわれる。 「言ったでしょ、仕事でいい加減な事をする子をボクは認めない」 「じゃあ、お仕事がんばったら、またこうしてくれる?」 「それは」 天は迷っているようだった、だから陸は手を握って直接天に触れる。「天にぃが言うなら、オレ、何でもするよ」 ごくりと天が唾を飲み込むのが分かった、だから陸はそのまま抱き着いて耳元に唇を寄せる。 「天にぃ、大好き」 ゆっくりと、天の手が陸の背中に回された。「じゃあボク以外を見ないで、笑いかけないで、甘えないで」 「いいよ」 理不尽な命令にも陸は笑った。「嘘、お仕事はちゃんとしよう」 「そうだね、天にぃもお仕事だと笑うもんね……でも、本物はオレにだけほしい」 自分もそうするからと約束すれば、天は頷いてくれた。お互いしか要らない、お互いが居ればいい。 それはきっと間違った感情。 誰かの庇護下にある子どもにはきっと許されない。 でも大人になったら、誰の世話にもならないで済んだら、自分達のやることに口出しされない環境なら。叶う。