「してんしさま、おそとはおはなであふれているというのはほんとうですか?」 「・・・えぇ。天界は多くの花々に囲まれた聖域です。それがどうかしましたか?テン。」双子を監視下に置いて育てると決められたその時から双子の力を抑えるための特殊な塔を作り、そこに幽閉することで要らぬ知識は与えず、天界に仇なす存在にならないための教育を熾天使が引き受けていた。 そんな熾天使にある問いをした双子の兄──テンを見つめながら目を細める。塔の外に興味を抱くことを避けていたはずだったのだが、それを聞いてくるということはどこからかその情報を得たということだと内心で導き出すと、余計なことを教えた者に処罰を与えなくてはならないと、監視の任に就いている天使たちを調べることに決める。問いには否定をせずに答えたのは、真実を知りたいと言われたら困るからだ。 双子を塔から出すことはどんな理由であろうと大罪人とみなされる。全能神の怒りに天使ごときが抗えるわけがないのだ。罪を犯した末路は己の消滅のみ。そんなこと好き好んで選ぶような愚かさは熾天使は持ち合わせていない。