「お、男っ……。う、うちのオフィスに、おと……」 俺を目にした社長は、両手で頭を抱えながら顔を赤くしていく。 一体どうしたんだろう。 そこへ、真中さんも顔を出して俺を紹介してくれる。「社長、彼が東くんよ。言っとくけど、椎名の報告は全部本当だから。私も保証するわ」「ほ、ほんとうなのか……?」 驚愕の表情を保ったまま凍り付く社長。 そんなに驚く事なのだろうか。わからないが、とりあえず失礼のないように頭だけは下げておこう。「あの、東といいます。椎名さんに助けて頂きまして、こちらにお世話になってます」 泊めてもらう会社の社長さんだし、俺は丁寧にお辞儀をした。 すると、モニターの中の女性は頬を染めて顔を落としながら、ちらりとこちらを見上げて言った。「え、う、いや、う……、うむ……。れ、礼にはお、およばんが……」 言葉を噛みまくりながら、挙動不審に長い髪をいじり出す女性。どうも様子がおかしい。 先ほどまで凛々しい調子とはまるで別人だ。「あの、どうしたんですか。大丈夫ですか?」「い、い、いや、な、何でもにゃい、……ない」 真っ赤になって両掌を前に突き出す社長は、まるで人前に出るのが苦手な少女のようにも見える。 もしかして恥ずかしいのだろうか。 そんな上司を見て、氷科さんは高い声で笑い出した。「あははは! 社長は相変わらず圧倒的に男によえーな。ほんとにウチのトップか疑わしいぜ」「ごめんね東君。うちの社長、男の子と喋ると緊張しすぎて、ああなっちゃうのよ」「は、はあ……」 真中さんの言葉に、俺は茫然と頷くばかりだ。 社長が男と喋るだけで緊張って、そんなのアリなんだろうか。 だが、社長にもまだ疑念があるらしい。「し、し、しかし、だ、男子が、ま、魔術を使えるというのは……」 どもって真っ赤になりながら食い下がるモニターの女性に、氷科さんはニヤリと笑みを浮かべる。「まだ疑ってんのかよ社長。じゃあ、もっと驚いてもらうぜ。アズマ、わりーけどさっきの魔術、もう一回だけ社長に見せてやってくれねえか。どうしても信じてないみてーだからさ」「あ、はい」