腕の中でウルウルと瞳を潤ませている陸に、天は今日何度目かの溜息を吐き出す。 昔から、天は陸に甘い。 その自覚はある。 本当は、アイドルなんて辞めるように言いたかったけれど、流されて芸能界に入った割には、弟の意思は固くて。 こうなった陸は、自分の希望を曲げない。 誰に似たのか、とんでもなく頑固なのだ。「……はぁ。陸の気持ちは、良くわかったよ」 「じゃ、じゃあ、許しくれる?」 「交換条件を陸が飲むなら、ね」 「ぇ、な、何?」 「ボクが陸の専属マネージャーになる」 「へ?」 「さっき社長さんが言ってた、ボクがTRIGGERになるって話でも、別に構わない。ボクが陸の側に居ることが、陸がアイドルを続ける条件。……どうする?」 にこやかに告げられて、陸の目から涙が引っ込み、代わりに点になる。 それとは正反対に、主だって傍観者側だった4人が息を吹き返した。