筆者は大学院時代に人工知能・ニューロコンピュータの研究に従事していたが、当時、コンピュータは将来、チェスや将棋ではプロに勝てても、囲碁では無理だという見方が常識だった。コンピューティングパワーが幾何級数的に増大している今の時代でも、囲碁はある意味、“聖域”的な存在であり、少なくともあと10年はかかるであろうと言われていた。
それゆえ、今年3月に米グーグルの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した囲碁AIの「アルファ碁(AlphaGo)」が世界トップ棋士に5戦4勝したというニュースはあまりにも衝撃的だった。しかも、過去10年で最強と言われている韓国のプロ棋士、イ・セドル氏に圧勝したのだから。
直感的な判断という、人間ならではの脳力を、ある側面においてコンピュータが凌駕した、ということであり、このニュースの後、全世界でAIの研究開発がより一層加速している。いわゆる「2045年問題」あるいは「技術的シンギュラリティ」と呼ばれる、AIが人間の脳力を凌駕する日が到来する可能性が、にわかに現実味を帯びてきた。