「えっと・・・」 「同じ学部の人?同い年?あ!もしかして先輩だったり?」ワクワクといった表情で見てくるものだから言うつもりのなかった言葉が口から滑り落ちる。「な・・・」 「な?」 「七瀬・・・天くん・・・」 「・・・・・・え?」あぁ、やっぱり言うべきではなかったと恐る恐る彼女の顔を覗いた時、私は思わず声をあげてしまう。「ヒッ・・・」 「・・・・・・」先程まであんなに表情豊かだった彼女が嘘であったかのように感情が抜け落ちたような虚ろな表情に恐怖を抱いた。しばらく続いた沈黙に耐えられなくなったと同時に彼女が私を見る。「オレから、天にぃを盗ろうとしたの?」 「えっ、べ、別に七瀬さんから取ろうとしたわけじゃなくてっ・・・」 「盗ろうとしたんだよね?だって、告白したんでしょ?天にぃを自分のものにしたいから。ねぇ、」 「ヒッ・・・な、なにっ・・・」 「振られて良かったね。天にぃがあなたのこと守ってくれたんだ。」それまでのことがなかったかのような花が咲いた満面の笑みに、私の中に植え付けられた恐怖は拭えなかった。彼女はそれだけを最後に残して出て行くと、私は緊張が解けてへたり込む。一体何だったのだろうと考えても彼女のあの表情が頭から離れなかった。後日、偶然彼女と天くんが一緒にいた時にばったり出くわしてしまう。正直前の恐怖が消えたわけではないが、少なくとも彼女には励まされたのだ。そのお礼を述べないままなのは悪いと思って声をかけたら彼女は驚くべきこと言う。「えっと、どなたですか・・・?」 「え・・・?この間、泣いていた私に声をかけてくれて・・・」 「うーん・・・私、そんなことしたかなぁ?・・・ごめんなさい。あなたとはやっぱり初対面みたい。」 「どうし・・・」どうしたのと尋ねようとした私の耳元に天くんがそっと囁いてくる。