男は、中年にさしかかるだろうか…うつろな表情に、目と口だけが爛々と喜びにうち震えていて、その表情のアンバランスさがその男の心理状態を表しているようで、怖かった。 陸を抱き締めたまま、男は天やスタッフ達へと笑いながら脅していく。「何かしたら、陸くんをころす」皆、固まったまま、案じるようにじっと陸を見つめていた……「……陸くんのせいなんだからな、ライブでボクのために歌ってくれなかった。あんなに応援していたのに、こんなに好きなのに……一度も目が合わなかった……ひどいよね?だめだよね?…そうでしょう?」陸は困惑して、怯えていた。「……何か言えよ!」男が陸に刃物を振りかざそうとして、思わず天は足を踏み出した。しかしそれよりも早く、陸の側にいてくれたスタッフが庇うように男へと体当たりをしてくれた。「なんだよ!!」激昂した男が、スタッフへとその刃を向けた。 「やめて!」 陸の叫びが聞こえるのと、男とスタッフの体が重なるのは同時だった。 陸がその二人の間に割って入ろうとしているのを見て、天たちも叫んだ。 「陸!」 「あぶない!」もつれながら、陸や男達は三人で倒れこんだ。 「陸ーっ!」