「…っ、動けない」 紫色の長い髪を、黒く細いリボンでポニーテールにまとめた彼女は、困惑したように辺りを見渡した。 彼女の名前は神崎紫依里(かんざき しえり)。 高校3年生で生徒会長を務め、周囲からの評価は高い。加えて顔も頭もスタイルも良く、男女共に人気がある。そのぐらい、彼女はよくできた人間であった。しかし、そんな彼女には1つ秘密があった。 それは自分が「魔法少女」だということ。 魔法少女は、未知の存在から人類を守るべく日々奮闘する少女たちである。しかしそれを良くないと思う輩もいるわけで、こうして敵に捕えられることも少なくない。平穏に過ごすために、紫依里は同じ境遇の友人たちと共に戦っている。 …話は戻り、紫依里は自身が置かれた状況を見直す。 現在、紫依里は石でできた無機質で冷たい椅子に座っており、手首から腕が革ベルトでひじ掛けに固定されている。両足は揃えたまま伸ばされ、壁に埋め込まれており、自分の足先が見えないようになっていた。どうにか外せないかと身じろいでみるが、拘束具がギシギシと音を立てるだけで、全くビクともしなかった。(どうしてこんなことに…全く思いだせないなんて…) 紫依里は文字通り、気が付いたら此処にいた。今の紫依里の服装は、魔法少女に変身した後の姿だ。踊り子にも似た紫色を基調とした薄い衣装である。もしかすると戦闘中、自分が気づかない内に気絶させられ、拉致されたのかもしれない。そう思うと、紫依里は少し屈辱的な気分になった。(それにしても、誰もいない…拘束したまま放置することなんてあるのかしら) 紫依里がそう考えていると、ポンッという音と共にマジックハンドが現れた。それらはワキワキと指を蠢かす。「…っ!なにこれ…」 理解不能な物体が突然現れて冷や汗が垂れるが、おそらくこれは人体に傷をつけるものではない。指先は尖っておらず、傷を作れるようなものではないため、紫依里は内心ホッとする。しかし、だとしたら一体この手で何をするのだろうか。(首を絞められる?目を潰される?それとも、胸を揉まれる…?) 様々な用途が思い浮かんでは消えたが、マジックハンドは紫依里の思っていることとは正反対のことを試みてきた。「きゃっ…!」マジックハンドは薄いシースルーに包まれた紫依里の脇腹に到達し、ゆっくりとくすぐり始めた。「…っ、ふふ…」こちょこちょとゆっくりくすぐられるが、紫依里は脇腹は強いほうだ。これなら耐えられる、と安心する。「ん!く、ふぅ…っ!」 ぐにぐにと丁寧に脇腹を揉みしだかれ、思わず吐息が漏れる。強いといっても多少はくすぐったく、反射的に身を捩ってしまう。早く終わってほしいと願っていると、マジックハンドが脇腹は効かないということに気づいたのか、くすぐるのを止めて脇腹から離れる。そのままパッと消えてしまった。「何?もう終わりなの?大したことないわね」